株式会社BLESSING 代表取締役

徳田 勝義katsuyoshi Tokuda

1981年6月18日、埼玉県生まれ。リビングに勤務後、2007年に独立しヘアサロン『BLESSING』を開業。
2015年に屋号を『ku-to』に変更。現在ヘアサロン4店舗、アイラッシュサロン1店舗を運営。地域1番のファミリーサロンをコンセプトに30店舗の出店を目指している。

 

『技術』と『接客』教育の棲み分けで複数店舗を効率的に回転。『失敗しないサロンづくり』の極意とは

目指せ『30店舗』出店!知りたいのは『多店舗展開のノウハウ』

リビングに勤務後、2007年に独立しヘアサロン『BLESSING』を開業。その後サロン名を『ku-to(クート)』に改め、現在は埼玉県内に5店舗を構える。
開業当初から目標に掲げるのは“サロン30店舗の出店”だが、自社に適したビジネスモデル構築のための具体的な戦略を模索するには情報が足りないと感じていた。知りたいのは“多店舗展開のノウハウ”。
「開業するからには、30店舗は出店したいと最初から決めていました。ただ具体的に何から手をつければ良いのかと考えあぐねる日々でした」

便利なシステムはうまく活用しながら、自社ビジネスモデルを構築

そんな試行錯誤の日々のなか、SPCの先輩経営者がサロンを訪れたことで状況は変わった。
「多店舗展開について勉強中のちょうど良いタイミングだったので“経営戦略”や“集客の増やし方”などの話をまず聞いて、1度会議に出席してみようかなという気持ちになりました」
そうして入会後、“30店舗を出店すること”が目標であることを先輩経営者に伝えると「まず大事なことは“スタッフの確保”、それが成功したら次に“集客”だよ」と他店の前例を交えながら目的に合わせて具体的なアドバイスをもらった。
スタッフが増えれば生産性は上がり、集客が成功すればさらにスタッフの経験値が向上、サロンのクオリティアップを図ることができる。
本来、難しいとされる新人の育成には『ワールドアカデミー』※1をうまく活用し、教育を外部のプロに任せることで自社の負担を軽減。その分“経営”に注力できるという土台をつくり上げた。
「ようやくサロンが軌道に乗り始め、現在は5店舗を展開中です。自社ならではのビジネスモデルも確立してきましたので、向こう10年間で30店舗出店できるという見通しが充分につきましたね」

※1『ワールドアカデミー』とは、1年でカット技能が習得できる学校のこと。

『経営者交流』は知識の精度を上げ、遊びにも行けるフランクな場所

毎週会議に参加して変わったことは、自分の知識や考え方の精度が徐々に上がっていることだという。
「求人の応募が多すぎる場合どうすればいいか、ブログ・ネット発信・口コミ・紹介などの集客方法をすべて実践するとどれくらい数字に反映されるのか…はじめはわからないことも、教えてもらったノウハウを実践しながら意見交換をするうち情報に無駄がなくなるため、より有益な知識に磨かれていきます。そして気がつけば、今度は自分が教える側に立っていて、ダイレクトに自身の成長も実感できます。“経営者交流”とは、互いの知識の精度を上げるための貴重な場所であると思っています」

たとえば、“同じ趣味を持ったゴルフ会員のようなイメージ。情報交換もできて経営者同士で勉強もできるような仲間がつくれるコミュニティはなかなかない”と話す。
「“25,000円を払って友達を作りに行く場所だよ”と先輩経営者から言われましたが、たしかに会員制クラブとして考えれば納得です。損得感情よりもまずは同じ悩みを共有できてフランクに付き合える仲間がいるということ、友人が増えたというところが自分には金額以上の価値を感じます」
経営者である自分自身を客観的な視点から叱ってくれる友人や先輩はある種“ファミリー”のような貴重な存在であると語った。

『求人』『集客』『教育』3大要素の循環を促進させたことがターニングポイント

複数店舗を経営していくには「求人」「集客」「教育」の3つをうまく循環させ続けることが肝であると学んだときターニングポイントが訪れた。
「これまで勤めていたサロンでは“自分で売上を立てること”が大切だと教えられてきましたが、経営者交流では“自分はマネージメントに回り、スタッフに売上をつくらせること”が重要だと言われ、経営者は真逆の視点を持つことに気が付きました」
それから、求人ではスタッフを多めに雇用。次に“技術面”の教育を外部に委託することで、ベテランスタッフの新人教育にかかる労力を軽減。その結果、複数店舗を効率的に回転させ集客力がアップした。
“人”がいなければ組織は拡大しない。複雑なことを考えるより「求人」「集客」「教育」この3大要素を絶えず循環させることが“30店舗出店目標”を実現する要だ。

『技術』と『接客』教育の棲み分けで効率化

ヘアサロン『ku-to(クート)』は、お子様から大人世代まで幅広く愛される地域密着型ファミリーサロン。平均単価が8,500円とファミリーサロンとしてはやや高めに設定。その理由は、カットに1時間あまりを要してしまう経験の浅いスタイリストの生産性を上げるためだ。スピーディーに数をこなせないのであれば、逆にしっかり時間をかけ丁寧な施術をすることで客単価を上げるという方針に切り替えた。
新人の技術教育はSPC加盟で参加可能な「ワールドアカデミー」を利用。専用のウィッグなどを使用した実践的なカット技能が1年で習得できるため新卒採用から早期スタイリストデビューが可能に。
「『ku-to』では1年でカットデビューさせ、他の技術は順番に習得していく方法をとっています。この点が他社と違う“教育方針”です。技術面を外部に委託している分、当社ではコミュニケーション能力や接客応対における心遣いなどの教育に力を入れています」
客の施術メニューの割合から見ても、20%程度のカラーやパーマより100%であるカットの技術を先に習得することがもっとも効率の良い育成順序であるという。
「“この先輩に教えてもらいたい”などの価値観はもはや古いように感じます。小規模サロンでしっかりとした教育体制を維持するのはこれから先難しい時代になると考え、“技術面”と“接客面”で教育の棲み分けをすることで効率化を図っています」
自社でやることと外部に委託することを明確に分けたことが様々な相乗効果を生みスタッフの自主性を引き出している。

また、独自の役職として“店長”の次に“ネクストリーダー”というポストを設けている。代表が店長を、店長がネクストリーダーを育成するといった分担が成され、店長教育においては、“会社・社長・美容”の3つについてきちんと矜持を伝えることを徹底している。

若いスタッフの自主性を尊重し、想定の倍近い売上を記録

注目したいのは、2021年3月にオープンしたアイラッシュサロン『en_by ku-to』だ。厳しいコロナ禍において、初月から目標の売上を超え、5月には想定の倍近い売上を叩き出した。
かねてより構想していたアイラッシュサロンを開店するにあたり、自社でスタッフを募ったところ、志望者が集まり自主的に役割を分担。知らない間にデビュー1年目のアイリストが店長に就任していたという。
「責任を与えた方が成長することを経験上知っていたので、代表である僕はあえて関わりませんでした。“一緒に頑張ろう”という気持ちは共有しますが、実際は若いスタッフの自主性に任せています。それがある意味『ku-to』独自の文化でもありますね。店長をはじめスタッフが自ら考え行動することが今後の多店舗展開において最重要であると考えています」

小規模パッケージの失敗しない『ビジネスモデル』

理想とするのは17坪から20坪でスタッフは4〜5人、売上は300万円程度のパッケージでスモールビジネスをスピーディーに展開すること。それが『ku-to』の描くビジネスモデルだ。あくまでも店長が管理しやすい規模で突出した売上のスタッフはつくらずアベレージを高く持つことが重要なのだ。
「僕は他店を参考に新しいアイデを取り入れることが得意なんです。成功しているモデルを参考にすれば低リスクで挑戦ができるし、自社のオリジナリティはそれから色付けても遅くはない。その点でいえば、“経営者交流”はビジネスモデルの宝庫。新店をオープンするたびに「チラシはこう配布した方が効果があるよ」「3店舗目の出店は人に任せてこの人数でやった方がいいよ」という具合に、状況に応じて成功例を教えてもらえたので、素直にそれを実践するとまず失敗が少なくなります。そして4店舗目の出店のために意見を伺うと、“もう自分でできるはずだよ”と言われました(笑)」
スタッフの自主性を見守りながら自由に育む“教育方針”。それを中心に据えて培ってきたこのビジネルモデルは成功のビジョンしか映さないことを確信している。

INTERVIEW DATA

会社名
株式会社BLESSING
代表
徳田 勝義
創業
2007年3月3日
店舗数
5店舗
スタッフ数
33名
本社所在地
千葉市稲毛区弥生町2-21
取材店舗名
Ku-to+
店舗所在地
埼玉県さいたま市南区南本町2-3-8志賀パレス405
URL
https://ku-to-minamiurawa.com

有限会社コモン・ディー 代表取締役

小野崎 敏夫Toshio Onozaki

1972年6月19日、千葉県生まれ。高校卒業後、通信制の美容専門学校で美容免許取得、大手美容室グループ勤務を経て27歳で独立。現在は、美容室「Dejave hair&Space西千葉」「LUCIDO STYLE GLOBAL.D稲毛」「GLOBAL.D Eye lash稲毛」を運営。
〜「似合う」を知ると「なりたい」が叶う〜『パーソナルカウンセリング』による「根拠」ある「提案」を推進。素敵に歳を重ねられる美容室を目指す。座右の銘は『コツコツが勝つコツ』

他にはない価値を『ブランディング』して『発信』する。 独自の『パーソナルカウンセリング』で立地に依存しない新時代の集客を図る。

大手美容グループからの独立。『新規集客』がいちばんの難点だった

通信制の美容専門学校で免許を取得後、上場も果たす大手美容グループにて勤務。スタイリスト約700名のなかで年間指名売上1位を獲得したことがきっかけとなり、さらに仕事にのめり込むも“大手”であるがゆえの薬剤の使用制限や働き方に窮屈さを感じ、自らの可能性を追求すべく27歳でヘアサロン『Dejavu(デジャヴ)』を開業した。
しかし、来店するほとんどが自分の顧客であったため、他スタッフになかなか客がつかず新人の実践経験を増やせないという育成にあたる課題が生じた。
「新規集客が何より大事とわかっていながら、当時主流だったチラシや地域紙(この当時、ホットペッパービューティーはまだ無く)は掲載料金とデザイン料で100万円以上というのがザラで費用対を考えると検討し難い状態で、“どうすればお客様が呼べるのか”を独立してからいちばん悩み考えました」
すべて整えられた環境にあった大手勤務当時には隠れていた側面が開業したことで見え始めたとき、経営者として学ぶべきポイントは“集客方法”だったと認識した。

週に1度、店を任せることで、スタッフの協力体制ができあがった

大手美容グループから晴れて独立開業を果たしたものの、依然として集客方法に悩み続けていた折にSPCの先輩経営者が来店し、話をするうち経営のハウツーに触れた。
「チラシの作り方から集客の基本まで自分の知らない知識を得るほど、“もう少し詳しい話を聞いてみたい”と思い立ったことが入会のきっかけです」
これまでストイックに腕を磨いてきた技術者にとって、営業時間内の外出や経営者同士で交流すること自体がはじめての経験。『メディアモーダー会議』に参加するため週に1度の外出を負担に感じていたが、「経営者として“時間をつくる”ことが大切なんだよ」と教えられ、その発想に現状打破のヒントを得た。
それから少しずつ自分以外のスタッフに店を任せられる環境を整えると次第にスタッフ間で連携と協力体制が生まれ、サロン全体の意識が向上。“新規集客”は大事だがスタッフの意識を変えることもまた見落としてはならない育成要素であると実感した。
「会議に通い始めると、経営学を1から学ぶことができとても刺激を受けましたが、それ以外にも様々な飲み会や場所に連れて行っていただき大人の社会勉強もさせてもらいました(笑)」

自店の『商圏』以外の最新情報を共有できることが強み

自身が千葉県出身であり現在も県内に美容室3店舗を運営する小野崎代表だが、“経営者交流”における最大の強みは“地方のサロン見学”だという。
「私は千葉で生まれ育ちそこに自店を構えているため、商圏はおのずと千葉県一帯になりますが、それが全国の会員サロンを実際に見学できるようになって新しい刺激をたくさんもらいました」
通常の営業圏内では知り得ない地方ならではのニッチな視点や発想、流行や設備など最新の情報をいち早く共有することで新たなサービス開発の手がかりにいつでも触れることができるというわけだ。
そして、お世話になった先輩経営者たちに感謝をしながら、「つねに“超えたい目標”として先を走ってくれる存在がいることが何よりもありがたい糧です」と語った。

現在は、美容室『Dejave hair&Space西千葉』『LUCIDO STYLE GLOBAL.D稲毛』『GLOBAL.D Eye lash稲毛』を運営。店舗の立地に依存せず、大衆性よりも個人に向けた丁寧な価値を提供すべく『パーソナルカウンセリング』サービスを提供。お客様1人ひとりと向き合い魅力を引き出せるような他にはない業態を目指し、来年には個室スペースを備えたサロンへ改装するなど、さらなる成長と進化を続けている。

目的とビジョンの共有が『信頼』を生む。『スタッフとの連携』がターニングポイント

オーナー兼技術者として一緒に仕事をしていれば、話さずとも経験からスタッフが意向を汲み取ってくれる場面は多いが、目的やビジョン、将来について明確な言葉で共有し始めたときからある変化が訪れた。
「会議で1日外出することへ不信感が生まれないよう“何のために会議へ出席するのか”をきちんと説明し続けたことで、サロンの状況を理解し協力してくれる社員が増えていきました」
“何のために今これをするか”目的意識を共有するとスタッフ同士でスムーズに連携がとれ、目指すビジョンが明確であれば行動にも迷いがなくなり安心して店を任せることができるように。
今では“将来どんなサロンにしたいか”という想いやビジョンを信頼してくれ、共に成長してくれた幹部とスタッフたちがサロンを支える財産であると感じている。

流行よりも『個人』に寄り添う『パーソナルカウンセリング』が大好評

美容室『Dejave hair&Space西千葉』『LUCIDO STYLE GLOBAL.D稲毛』『GLOBAL.D Eye lash稲毛』では、ファッションや似合わせの専門家であるイメージコンサルタント監修の独自の診断システム『パーソナルカウンセリング』サービスを提供。
“お客様もまだ知らない理想の自分”を発見してもらうため、
顔のパーツや輪郭、雰囲気から最適なヘアスタイル・まつ毛・眉毛の形を提案する。流行や大衆性に訴求するよりも、個人にフォーカスすることで独自の価値を見出すことができる代替不可のサービスに取り組んでいる。

他と差別化を図るには、こうしたサロン特有の“ブランディング”が要となる。千葉県内サロンによる会議では『ブランディング勉強会』が随時開催されるほどその重要性は年々高まっている。
「ある経営者のアドバイスだけを鵜呑みにすると、実際の経営とズレが生じる場合があります。会議では各社のビジネスモデルを認識しそこに合わせたアドバイスをするよう心がけています。これからの時代、ただ成功例を真似るだけでなく、それぞれのサロンに合ったブランディングが最重要だと考えています」

『立地優位性』は一昔前の価値観。
『ブランディング』と『発信』で集客はできる

かつての“回転率”重視の営業から、客個人と向き合うサービスへと転換したのはコロナ禍の影響がきっかけだった。
「駅前が集客に有利という価値観はもう古いと思います。他にはないサービスを提供し、その特徴をネットで発信することで、今や立地に依存しない集客が可能です」
1人ひとりと丁寧に向き合う『パーソナルカウンセリング』で単価を上げ、家賃を抑えればその分スタッフに還元できるという仕組み。
「これからは“時代に合わせる”のではなく、“時代を先取る”サロンづくりを目指しています。来年改装予定の1号店には個室スペースを多くとり、お客様個々人の魅力を最大限に引き出せるような他にはない業態を目指しています」
当サロンは今まさに、第2の転換期を迎えている。

INTERVIEW DATA

会社名
有限会社コモン・ディー
代表
小野崎 敏夫
創業
2001年9月26日
店舗数
2店舗
スタッフ数
30名
本社所在地
千葉市稲毛区弥生町2-21
取材店舗名
LUCIDO STYLE GLOBAL.D
店舗所在地
千葉県千葉市稲毛区小仲台2-4-12 sign稲毛駅前ビル3F
URL
https://dejave.com/

BARBER-BAR NAKANO オーナー

関川 義徳Yoshinori Sekikawa

1989年、理容師としてレオン新宿店に就職。1994年、店長に就任し2000年に独立。東京都中野区で『Hairsalon JEDI( ジェダイ)』のオーナーとしてサロンを立ち上げ。2011年、SPCメディア会員を経て正会員に加入。2019年4月、SPCの新PBブランド『BARBER-BAR』の第一号店としてリニューアルオープン。これを機に、都内サロンでASとして働いていた息子が戻り、現在3名のスタッフと共に店舗を運営している。

40代最後に新業態サロンへ挑戦
未知への1歩を踏み出す“マインドチェンジ”のきっかけとは

経営戦略がないまま
手探りで走り続けた開業当初

大手美容グループでの勤務経験を経て、夫婦で理容店『JEDI(ジェダイ)』を開業。しかし技術者から経営者へと視点を転換させることが何より難しく、安定しない売上に家計が左右される日々…。順調に見えた開業時から顧客は次第に減少し、いかにして店を維持するかの経営問題にぶつかった。
「同業者はライバルなので誰にも相談はできませんでした。そのため、他店との比較もできず今後どのように売上を確保していくかの見通しを立てることができない状態のままただ走り続けていました」

孤独経営からの脱却
現状を変えるために、まず他店を知った

開業当初、1人で100万円の売上を立てていた現状に甘んじ、集客努力を怠ったことで経営状況は悪化。悩んでいる折に、大手美容グループ勤務時代の同僚に誘われ『SPC主催サロン見学ツアー』に夫婦で参加した。自店の何倍も活気のある繁盛店を目の当たりにしたときの説得力は団体に抱いていた抵抗感を払拭するには充分だった。
「団体理念に共感というより、少しでも情報がほしい一心からその場で入会を決めました。その後の懇親会でも全国の経営者と交流を持つことができ、親身になってアドバイスをいただいたことで一気に視野が広がって、もっと有益な情報を共有したいという意欲が湧きました」

入会してからは、準会員が集まる『メディアモーダー会議』で経営の基礎(企業理念・ヴィジョン)や営業のノウハウ(新規集客・客単価UP)について1から教わり、実践した分だけたしかに売上が回復していく変化を実感。さらなるステップアップを図るべく正会員になることを決めた。

床屋から新業態サロンへ
これからは自らが影響を与える側に

顧客増加に伴い、これまでの1人体制から女性正社員1人が入社。成功した先輩経営者からのアドバイスもあり、一時期は“女性のお客様を多く取り込む”集客方針へシフトしたが、試行錯誤するうち次第にやりたいことが明確になっていった。
“男性のお客様中心で、ブランド力のあるサロンをつくりたい”当時4000円台だった理容店の客単価を上げ、サロンの価値をもっと高めたいと思案していた折に、SPCが新しく立ち上げたメンズサロンブランド『BARBER-BAR』と図らずも経営理念が合致。理容店『JEDI(ジェダイ)』はメンズサロン『BARBER-BAR』第1号店として業態を変更、内外装を刷新しリニューアルオープン。理美容業界初の新業態サロンへと生まれ変わりを果たした。

『BARBER-BAR』にとっても関川代表にとっても初めての試みである新業態メンズサロンだが、オープン後はターゲットを絞ることで効率的に新規客を獲得、客単価を上げたことでサロンのクオリティアップと売上増に成功している。
現在は、都会的な外装とサロンのブランド力を活かすべく、柔軟な発想力を持つ息子さんもサロン経営に加わり、家族一丸となってオリジナルアプリやオリジナル商品の開発など続々と展開。若い経営者たちに良い刺激と影響を与える存在となっている。

『経営者としてのマインドチェンジ』と
『スタッフの入社』がターニングポイント

40代最後の挑戦『BARBER-BAR中野』の出店は、仲間のサポートがあったからこそ“やってみよう”と踏み出す自信につながった。この心強いネットワークが背中を押したとき、ターニングポイントが訪れた。
「開業当初のひとよがりな思考では気づけなかったことが、経営者同士で意見交換を重ねることで知見と視野が広がり“経営者としてのマインド”を入れ変えることができました」
また、スタッフの入社も大きく意識を変えた。スタッフの将来に責任を持つためにはコンスタントに売上をつくる必要があり、経営戦略として新しいサービスへ挑戦し続けるというアクティブな発想へと転換することができた。
「『BARBER-BAR中野』では、つねに他にはない価値を提供することを心がけています」

大人男性のニーズに応えるメニューと
独自の技術『頭筋膜はがし』が大好評

「バイタイリティ溢れる男をつくる」というコンセプトが大人世代の高収入男性に受け入れられ、他のサロンにはない独自の技術『頭筋膜はがし』メニューが大好評。
「総合調髪」だけでない現代男性のニーズに応える独自のブランド性を確立している。

次回予約率86%
高い客単価で集客を実現

スタンダードコース11000円、新規客7700円という高単価で集客を実現。さらに次回予約率は86%、新規再来率は68%を越え、格別の顧客満足度を誇る。
あえてターゲットを絞ることで、床屋だった当時の業態では不可能だった高い水準で売上をつくることに成功している。

INTERVIEW DATA

会社名
BARBER-BAR NAKANO
代表
関川 義徳
創業
2000年6月
店舗数
1店舗
スタッフ数
4名
本社所在地
店舗と同じ
取材店舗名
BARBER-BAR NAKANO
店舗所在地
東京都中野区中央4丁目44-12 丸山ビル 1F
URL
https://barber-bar.com/

㈲ベルファミリー代表取締役社長

上田秀文hidefumi ueda

1971年4月6日、宮崎県生まれ。福岡大学卒業後、大手居酒屋チェーンのテンアライド㈱入社。東京都内の数店舗を管轄するマネージャーとしてチェーンオペレーションを学ぶ。3年勤務後、SPC幹部の親族が経営する料理屋へ転職。2000年、結婚。2002年、美容室経営に転じ、義母が経営するベルファミリー入社。2004年SPC入会。入会当時は1店舗、スタッフ7名だったサロンを11店舗90名に拡大し、成長を続けている。取締役社長を経て5年前に、代表取締役社長に就任。

定着率100%!秘訣は社員とパートの黄金比率
『スタッフが辞めないサロン』はいかにして生まれたのか

理美容業界未経験。
元・飲食店マネージャーから経営者へ

大手居酒屋チェーンで複数店舗を管轄するマネージャーとして3年勤務し料理屋への転職を経た後、ベルファミリーの創業者・鈴木次子さんの長女と結婚。その後、当時パートとして働いていたサロンをオーナーから譲り受けたという次子さんから「一緒に多店舗化していかないか」との誘いを受け2002年より入社、美容室経営に参画した。
「パートで入った次子さんがサロンを譲り受け、もともとサロンオーナーと関わりのあった私が経営に携わることに深いご縁を感じました」
こうして心機一転、異業種からの挑戦が始まった。

会員サロンはフリーパスポート状態!?
様々な見学体験が一番の勉強だった

ベルファミリーへ入社直後は苦悩と葛藤が続いた。それまで家族とスタッフでやってきたサロンに突如、美容師免許を持たない未経験者が入り「多店舗化しましょう」と奮闘しても、反発は否めず現実は甘くなかった。知りたいことは山ほどあるが経営について質問できる相手はおらず、チェーンオペレーションの知識では歯が立たない。相談できる環境がないまま2年が過ぎ切羽詰まっていた折に、オーナーの次子さんに促され、一念発起してSPCへの入会を決めた。
「実際に入会してみると、外から見ていた印象とはまるで違いました。不毛な2年間を経たからこそ、何でも教えてくれる風土と先輩経営者たちの親身なあたたかさが本当にありがたかったです」

特に印象的だったのは「入会したらフリーパスポートをもらったのと同じ。全国の会員サロンどこでも勉強しに行くといいよ」この言葉に背中を押され様々なサロンへ足を運んだ。そして経営者の視点、仲間との情報共有、意識を変える習慣や組織作りなどを学び、ようやく解決の糸口が見えた。「SPCは太鼓のようなもの。大きく叩けば大きく返ってくるし、叩かなければ一切音は出ない。だからどんどん叩いた方がいい」というアドバイスは今でも問題解決のための原動力になっている。

“経営者交流”が変えた意識
後輩への協力は理美容業界への投資

経営について学ぶなかでもっとも有益だったのは、見学へうかがうサロンのほとんどが惜しみなく自店の情報を共有してくれたことだ。たとえば飲食業界ではお店の命である“秘伝のタレ”のレシピは口外無用だが、先輩経営者たちは事務所の内部や数字まで詳細に見せてくれる。あまりに気前がいいので質問したところ、こんな答えが返ってきた。「これが理念だから。経営や技術を教えるだけじゃなく、人として信頼関係を築くことが大事。自分も先輩に助けられて今がある。だから、あなたが将来同じ立場になったとき必ず後輩に協力してあげてください」美容室ならではの体温を感じる経営者のあり方に胸を打たれ、ようやく未経験からはじめた“美容室経営”の進むべき道がひらけた。
仲間への協力を惜しまないこの理念を受け継ぎ、先輩から受けた学びと恩恵を次は自ら後輩へと伝授していくことが理美容業界への投資、ひいては恩返しになる。単純にハウツーを知るだけなら、どこにでも情報が溢れている現代。熱意を持って意見を交わし、アイデアやノウハウを共有するなど、人と人とがつながり合い受け継がれる業界繁栄への好循環を生み出せることが“経営者交流”の醍醐味だ。

現在は、新卒からママさんパートまで働きやすさとやりがいを尊重し多様な雇用形態を設定することで時代とマッチ。“人”を大切にする経営方針を掲げ会社を急成長させている。

『効率』よりも『人財』が最優先。
本質への気づきがターニングポイント

チェーンストアでの経験から、スピードや効率ばかりを重視した考えに囚われがちだったが、『人財』を大切にすることが、美容室経営の本質であると気がついたときにターニングポイントが訪れた。
スタッフが働きやすい環境を整えるため、多様な勤務形態を取り入れ、約半数はパートを採用。スタッフのやりがいを尊重することが現場でのより良い接客や技術の提供へつながり、結果お客様の再来店が増えるようになった。経営者として“人との向き合い方”を見直したことにより、視点を転換できたことが大きな分岐点となった。

スタッフの約5割がママさんスタイリスト。
多様な働き方を選べる取り組み

ベルファミリーでは、パートをタイムスタイリストと呼び、ライフスタイルの変化に合わせて段階的にステップアップできる働き方を設定。出産後も無理なく社会復帰できるうえ、再度正社員を目指せる制度により、産休復帰後のスタッフが現在も長く美容師として活躍している。
いきいきと働くその姿を見た若手スタッフが“結婚して子どもができても活躍できる”と希望をもつことができ、やがて出産した際に戻ってきてくれるというポジティブなサイクルを生み出している。
今でこそ多いパート採用だが、雇用形態を一新した当時は画期的であり、妊娠を期に他社を退職したスタイリストが続々と入社。

新卒は10人に1人しか残らないのに対し、ずっと働き続けるパートにスポットを当て、週1勤務から時短勤務まで多様な働き方を可能にしたことで、充分なスタッフ数を確保。発想の転換が見事に功を奏した。

重要なポイントは、タイムスタイリストと社員の割合を1:1とする点だ。お互いを尊重し合えるよう若手スタッフには「一人前の美容師になるには、タイムスタイリストにかわいがられなさい」と指導、幹部社員には「完全週休2日で安心して休めるのは、タイムスタイリストが売上を守り続けているおかげ」と伝え、タイムスタイリストには「自由な形態で働けるのは、社員がいるから成り立っている。リーダーの言うことはよく聞いて、新人はかわいがってあげて」と、三者の立場を考慮した働きかけを行い、それぞれに助け合えるチームワークを実現している。
年齢や雇用形態の違うスタッフが調和し合ってつくるのは、働きやすいサロン環境そのもの。こうした取り組みによってタイムスタイリストの定着率は100%を維持している。

年に1回の個人面談を実施。
社長と対話することで信頼関係を築く。

『人財』を大切にする経営理念の一環として、もっとも大事にしているのが鈴木会長と上田社長が直々に行う面談。
年に1回、1月から3月にかけてタイムスタイリスト、若手スタッフ、幹部社員へ実施している。
働くうえでの希望やキャリアプランの相談、家庭の状況などどんな声にも耳を傾ける。不満や要望を直接聞いてあげることが働きやすい環境づくりへと役立ち、スタッフの不安が和らいで信頼感が生まれるのだという。
10年以上続けるうち、スタッフ一人ひとりと向き合い対話することが長く働いてくれる信頼へつながっていると実感している。

※現在は『Zoom』を使用しオンラインにて実施

INTERVIEW DATA

会社名
有限会社ベルファミリー
代表者
代表取締役社長 上田秀文
創 業
1998年4月1日
店舗数
13店舗
スタッフ数
90名(うちパート45名)
本社所在地
〒350-1306 埼玉県狭山市富士見1-1-7
丸喜ビル4階
取材店舗名
PRIMO狭山店
店舗所在地
埼玉県狭山市入間川1-3-2スカイテラス狭山202 A号
URL
https://pure-hp.com