株式会社 横濱BARBER
豊島 昭王Akio Toyoshima
1972年9月6日、神奈川県生まれ。窪田理容美容専門学校卒業後、都立大学駅にある理容室に就職。その後、1894(明治27)年の創業から100年以上の歴史を持つ老舗『成田理髪店』に再就職。同社の倒産を機にスカイビル店舗とその歴史を継承し、2012年10月『株式会社 横濱BARBER』を設立、独立開業を果たす。現在は横浜に『理容室NARITA』『NARITA+PLUS』の2店舗を運営している。
明治から続く『老舗床屋』を継承し再建。独自ブランディングで幅広い年齢層に愛される床屋の真髄に触れる。
勤め先の倒産を機に、明治から代々続く『老舗床屋』を継承。
専門学校卒業後、都立大学駅にある理容室で4年間の修行に励んだ後、24歳で明治27年の創業から100年以上の歴史を持つ『成田理髪店』に再就職。かつては横浜駅舎にあったという老舗床屋に10年以上勤めるも、同社が倒産することとなり、自身でスカイビル店舗とその歴史を引き継ぐことを決意。
「もとはスタッフでしたが、100年続く歴史を残したいという想いから『理容室NARITA』として独立開業し、引き継がせていただきました」
急遽1ヶ月で『株式会社 横濱BARBER』を立ち上げ、ビルと交渉し、店舗を引き継いだ。そして解雇となったスタッフを再雇用し、存続の危ぶまれた老舗床屋の息を吹き返すべく、こうして豊島代表の挑戦は唐突に幕を開けた。
ノウハウは『トライ・アンド・エラー』でどんどん自店に取り入れる
技術者から経営者へ転身を遂げた当初、手探りながら懸命に目の前の仕事に取り組むものの、“社長としての立ち居振る舞い”とはどうあるべきなのかを試行錯誤していた。そんなある日、理容組合のパンフレットに入っていたチラシが目に留まる。
「“とにかく前進しなければ”と思い、経営学の必要性を強く感じていたので、SPCのチラシに掲載されていた“理容室経営”のセミナーイベントにすぐ申し込みました。8月のイベントに参加して1月にはもう正会員になっていましたね」
入会してからは、神奈川本部の会議に参加。先輩経営者たちの経験談を聞く“1分間スピーチ”で経営者としての在り方や姿勢を学び、情報やノウハウはあますことなく吸収。自店に落とし込んでは実践を重ねた。
「SPCはサロンの数だけ情報がありますよね。成功しているノウハウは“トライ・アンド・エラー”でどんどんトライして自店に合うようにうまく取り入れていくんです」
いかなる情報も吸収したあとが肝心だ。豊島代表は持ち前の行動力をいかんなく発揮、右肩上がりに業績を上げ続け、その後2店舗で1億円の売上を達成。危機に瀕した理容室を軌道に載せた。
吸収した『学び』を独自スタイルにアップデート
経営者交流は事例の宝庫、それをどう活用するかがもっとも重要だと話す。
「たとえば、理容室ではこれまで店販を重視してこなかったのですが、“福袋”キャンペーンのノウハウを教わってからは、毎年約400万円ほど店販売上を立てることができています」
月にムース1本売れれば良い方だという“理容室の常識”を塗り替え、美容室のような“福袋”セールスプロモーションを採用。また、先輩経営者から自社ホームページの重要性についてアドバイスを受け、オリジナリティ溢れるイメージ戦略を実践。トップページを飾るコミカルなイラストが親しみやすさを与え若い客層を獲得、集客は何倍にも増えたという。
「経営者交流には様々な“学び”がありますが、そのまま真似する必要はないんです。良いところだけを取り入れ自分のこだわりは最大限活かしながら、オリジナルに進化させていく。組織に対しても俯瞰的な視点で物事を見る。そういった自由な立ち位置を大事にしています」
先輩経営者から吸収したノウハウを自分なりに落とし込み、フレキシブルな発想で独自スタイルにアップデートしていく。歴史を重んじながらも進化を続ける『理容室NARITA』の真髄がここにある。
横浜で100年続く『成田理髪店』を引き継いだことがターニングポイント
明治から続く『成田理髪店』の窮地を救い、店を引き継いだことで技術者から経営者へ転身。豊島代表と老舗床屋の未来は大きく変わった。
これまでの顧客を混乱させないため屋号はあえて変えず『ナリタ』のまま継承、店を立て直すため奔走することとなる。
「まずは“経営理念”を設定し、スタッフが判断に迷ってもひとつの指針に立ち帰ることができるポイントをつくりました。目的意識を共有することで、スタッフの一体感はより強くなりましたね」
経営者になってからは、自身は経営に専念。店は店長が回すよう促し、極力口を出さないように務めた。現場の自主性に任せた結果、スタッフの意識が向上し店全体で良い流れをつくれるように。他に、メニューと客単価の見直し、新しいサービスの開発やブランディングなど次々と改革を推進。そして『理容室NARITA』は見事に息を吹き返した。
起業後に入会したSPCでの具体的な助言やアドバイスがなければ今の自分はいなかったという豊島代表。現在は自身が“店舗拡大に関するセミナー”の講師を勤めるなど活躍の場を広げ、アウトプットも自身を振り返る“学び”であると語った。
人気ブランドとコラボ!独自ブランディングで若者の集客アップ
『理容室NARITA』のブランディングは、豊島代表ならではのオリジナリティが光る。ホームページやポスターにはプロのイラストレーターに発注した遊び心のあるコミカルなイラストを掲載。気取らない親しみやすさが好評となり集客がアップ。また、ポップアップストアで見かけて一目惚れしたという人気ブランド『河合シャツ』とのコラボにより店の制服やクロスを共同開発し、新たなイメージへ一新。店舗でも『河合シャツ』の商品を取り扱っている。
こうした独自の取り組みが功を奏し、ネット上にある数々の『おしゃれ理容室ランキング』では『NARITA+PLUS』も含め常にランクイン。床屋でありながら、20代〜30代といった若年層の支持も集めている。
また、幅広い年齢層の誰もが“安心して通える場所”を提供するため、“素早い対応、礼儀正しい対応、きちんとした言葉遣い、自分は特別と感じられる対応”をモットーとしている。
「過不足なくお客様の“当たり前”にお応えすることを心がけています。“誰が担当しても、いつご来店されても、変わらない仕上がり”を目指し、髪を切りたいと思って出かけた人の足が自然と『理容室NARITA』へ向くような“生活の一部”になりたいですね」
店を回すのはスタッフの仕事。スタッフを守るのは僕の仕事。
今日も問題なく店が回るのは現場スタッフの力があってこそ。現時点での『理容室NARITA』の目標は“スタッフが安心して働ける環境をつくる”ことだ。
「お客様をリピートさせることはスタッフの仕事、スタッフの気持ちを裏切らないのが僕の仕事なんです。ひとりひとりに寄り添いながら後ろからそっと押し上げてあげられるようなあたたかい経営方針で、小さくても足腰の強い会社を目指しています」
老舗の看板を守りながら、独自のスタイルで成長を続ける『理容室NARITA』は、今や幅広い年齢層に愛される唯一無二の理容室へと進化を遂げた。
INTERVIEW DATA
- 会社名
- 株式会社 横濱BARBER
- 代表
- 豊島 昭王
- 創業
- 2012年10月
- 店舗数
- 2店舗
- スタッフ数
- 16名
- 本社所在地
- 神奈川県綾瀬市早川1601
- 取材店舗名
- スカイビル 理容室NARITA
- 店舗所在地
- 横浜市西区高島2-19-12-9F
- URL
- http://www.yokohamabarber.com