株式会社NEO

兼古 卓弥Takuya Kaneko

1973年10月7日、東京都生まれ。1971年5月25日、葛飾区四ツ木にて先代が『カネコ理容室』を創業。2004年に2代目として事業継承し、2008年3月『株式会社NEO』を起業し独立を果たす。現在は東京都墨田区で理美容サロン『NEO Hair』3店舗と『BARBER-BAR八広』1店舗を運営。ブランディング力を活かし、社員数100名の100年企業を目指している。

家業から事業へ。課題を『見える化』し目標達成!経営者がハサミを置く意義とは。

技術者兼経営責任者から経営者へ。その転身と苦悩。

理美容学校を卒業し技術者として修行を積んだ後、先代が運営する『カネコ理容室』へ戻り尽力。コンテストでは受賞経験多数、女性ファッション雑誌のモデルやタレントのヘアスタイリストを担当するなど実力派として頭角を現していた。しかし、事業拡大を構想するうえで避けられない課題“スタッフ育成”の壁にぶつかる。
「当時、技術者として自分の腕と成長を自負していましたが、一方でスタッフを雇用しても“育てる”という点にとても苦労していました。そのとき、まだまだ経営者としては未熟な自分自身を変えたいと悩んでいましたね」
その後、コンテスターとしての経歴にピリオドを打ち、経営の勉強に本腰を入れることに。

“将来的にどうなりたいか”というコーチングがきっかけで入会

経営していた理容室は小規模ながら安定的に利益を上げていたが、店舗展開の目標達成を重視し勉強の機会を探っていた。そんな折り、知り合いの先輩経営者との話のなかでSPCを勧められたことがきっかけとなりコーチングのセミナーに参加。(“コーチング”とは、対話のなかで観察や質問を投げかけながら提案などをして相手の内面にある答えを引き出す目標達成の手法)
「技術以外の講習会ははじめてでしたが、参加していたとあるサロンの店長に“将来的にどうなりたいか”ということをコーチングで聞き出され、店舗を広げたい、スタッフを増やしたいと伝えると“兼古さん、白衣脱ぎましょう!”と言われて驚きました。オーナーでもないイチスタッフがすでに“経営者”の思考を持っていたんです」
会員の経営学レベルの高さを目の当たりにし、これまでのSPCへの印象が大きく変化。この体験が決め手となり、入会に至ったという。普段は出会えない価値観や自分と違う意見を持つ方々と交流ができる点がSPCの魅力のひとつだ。

年商1億円を売り上げるには?逆算で課題を明確化し目標達成!

先輩経営者からは“個人事業”と“企業”の違いを教わり、“店を大きくしたいなら会社を起業しなさい”とのアドバイスを受け、2008年に『㈱NEO』を立ち上げた。
「企業の社長を勤めるなら最低でも年商1億円は上げないとダメだと言われ、先輩経営者たちからアドバイスをもらいました。年商1億円だと月商で850万円必要で、3店舗でやるなら250~300万円ずつ、ワンスタで考えたら50万円、スタッフ数は17名が適正だろうという逆算で課題をひとつずつクリアにしながら大きな目標に挑みました」
目標年商から逆算し課題を明確化することで、スタッフの士気と効率を上げ見事に売上1億円という目標を達成、会社は急成長を遂げた。

また、企業には“どこを目指すか”という理念が必須だという先輩経営者の意見から自社の方向性を考案。
「『㈱NEO』では、“3WIN(トリプルウィン)”というキーワードを大切にしています。「お客様の満足」「従業員の幸せ」「会社の利益」の3つを同時に叶えられる会社になろうと。物事の判断に迷ったときの基準はいつも“3WIN”です」
企業理念が定まり、目的意識をサロン全体で共有することで、価格設定や新メニュー導入、スタッフ育成などに際してスタッフに迷いがなくなり働きやすさが向上、会社が目に見えて変わり始めたという。
「“ダイヤモンドはダイヤモンドにしか磨けない”という言葉は本当だと思います。経営者交流の良いところは上下関係でなく“仲間同士”で磨き合えること。モデルケースの宝庫であり見学もさせてくれるので、圧倒的に事業展開が早くなりましたね」
理念が原動力に変わり経営方針にブレがなくなったことが大きな変革だったと語った。

スタッフよりまず自分が変わる。『明るく、元気で、素直』の思考転換がターニングポイント

スタッフ育成に悩んでいた当時、とある先輩経営者から酒席に誘われ「経営者なら、常に2~3個バッグに質問を入れて持ち歩け。真剣に経営していたら悩みがあるはずだ」との粋な計らいを受けて、スタッフに元気がないことを相談。すると「それは暗病反(アンビョウタン)だ。暗くて病的で反発的。スタッフは反対の明元素(メイゲンソ)、明るく元気で素直でなければいけないよ」との指南を受けハッと気がついた。そもそも自分は人が集まってくるような明るく元気で素直な人間であったかと。そして、有名な言葉が浮かんだ。“問うてみる。自分という師がいたなら、自分はついて行くだろうか”
このとき、人を変えるより“この人について行きたい”と思われる自分自身を俯瞰で捉え、そう振る舞うことが重要なのだという思考の転換が訪れた。
社長である自身が常に明るく接することで、サロンにも変化が見え、徐々にスタッフ間の連携や一体感が増し定着率がアップ。スタッフは自身を映す鏡であることを実感した。
「相手に求めるよりもまず、自分が明るく元気で素直に振る舞い、安心感を与えることを常に心がけています。“明元素”を酒席で教わってからずっとモットーにしているのでもはや肝臓に感謝ですね(笑)」

組織を明確にするブランディングを導入。目的意識を共有し“ビジョンの見える化”を実施。

『㈱NEO』では、ブランディングに力を入れ、スタッフがそれぞれの役割を理解することで主体性を育てるという体制を整えている。
「トップダウンでは行き詰まるため、スタッフの能力を集結させる必要があると考え、目的意識を共有するために“ビジョンの見える化”を図っています」
年末年始には全体の目標を定め、各店舗の目標、達成のために取るべき行動を模造紙に書き出し「一花五葉シート」を作成。達成部分には花を貼るなどの工夫をし、事務所に貼り出すことで誰が見ても進捗を共有できる仕組みになっている。
“新しいことをどんどん提案し、また新しい自分に生まれ変われる会社”という意味が込められた『NEO』。先代から受け継ぎ培ってきた土台を守りながらも、柔軟にチャレンジし続ける姿勢はまるで“温故知新”だ。兼古代表にとって名は体を表すとはまさにこのことだろう。
昨年50周年を迎えた『㈱NEO』は、ますます発展の兆しを見せ、社員数100人の100年企業になることが今後の展望だ。

 

40歳を機に経営に専念。技術者がハサミを置く意義とは。

サロン4店舗を出店し売上1億円を達成した後、40歳を機に兼古代表はハサミを置いた。
「横山創設理事に“いつまでも自分が偉大でいるな、偉大な人を作りなさい”と諭されました。ハサミを持つ限りいつまでも“現場の王様”のままであり、私の腕を超えるような実力のあるスタッフはやがて店を卒業してしまうんです。サロン全体の将来性を考えると、技術者中心の働き方から経営に専念することが最適解でした」
技術者として第一線を退き、今度は経営者として人を育てる方向へ徐々にシフト。材料の発注や新人教育など権限を社員へ移譲したことでスタッフに責任感と自主性が芽生え、定着率も向上。サロン全体が持続的な成長を見せた。
「現場を卒業する最後の日にずっとコンテストでモデルをしてくれた子が“最後のお客さんになりたい”と来店してくれました。自分の断髪式もしてハサミを全部そのお客様にあげちゃいました。私なりの決意証明です」
ハサミを置いたことで、経営者として新たなステージへと突入。人のために動き自分の器と視野を広げることが大事だと話す兼古代表の挑戦はこれからも続くだろう。

INTERVIEW DATA

会社名
株式会社NEO
代表
兼古 卓弥
創業
1971年5月
店舗数
4店舗
スタッフ数
27名
本社所在地
〒131-0041 東京都墨田区八広6-2-12
取材店舗名
NEO HAIR東武曳舟店
店舗所在地
〒131-0032 東京都墨田区東向島2-13-11-1F
URL
http://www.neohair.net