有限会社 Ruttu

比嘉 薫Kaoru Higa

1963年1月22日、沖縄県生まれ。結婚を機に会社を引き継ぎ、2004年 有限会社 Ruttu 設立。「ラブ&ホスピタリティー」をコンセプトに東京・埼玉でお客様のニーズやスタッフのライフステージに合わせたサロンを7店舗展開している。

約95%も失客を回避する独自の『接客メソッド』と28歳から設計する『キャリアプラン』制度で、時代に合わせた選択肢を提案。

28歳、ライフステージの変化を機に経営者としてのキャリア設計がはじまった

高校卒業後上京、通信教育で美容師免許を取得。技術者として腕を磨きながらコンテストにも積極的に参加していた。入社10年目の28歳で現在経営する会社元代表の長女と結婚。先代の逝去を機に会社を引き継ぎ、ヘアサロン『つるしま』を運営。その後独立し、2004年ヘアサロン『ルッツ』を新たに開業した。
当初は理容店であったサロンを“美容室”へと業態変更し、多店舗展開の構想を持っていたが、美容室経営の参考として相談できる相手はおらず、試行錯誤しながら孤軍奮闘を続けていた。
「独立の目標は当初から持っていましたが、床屋から美容室へと業態を変え多店舗展開を目指すには、あまりに情報が乏しく心細い状態でした。そのとき、美容業界に友人がいないことに気がついたんです」

『ノウハウ』と『仲間』。足りないピースが揃ったとき流れが変わった

会社を引き継いでから約10年間、経営と運営をこなしながら事業拡大のタイミングを見計らっていた。そんな折り、出身地の沖縄県から一緒に上京、就職した同期の友人がSPCに入会。これまで切磋琢磨し互いに高め合ってきた彼の“比嘉も向いてるよ”という言葉をきっかけに自身も入会に至った。
「引き継いだ店舗はいわゆる家族経営。今後、業態を変え出店するなど新たな挑戦に取り組むには経営方針を見直す必要があると感じていたので勉強するにはベストタイミングでした。美容メニューの技術やサロンの雰囲気、求人や集客など組織づくりの“ノウハウ”と“仲間”という足りなかったピースが同時に揃ったような感覚でした」
毎週会議に参加するにつれ、技術者から教育者、経営者へと思考の転換ができるようになり、美容室運営を1から学ぶためサロン見学にも参加。
「サロン見学に伺ったとき美容のパーマ施術を見せてもらいました。技術は得意なので1度見ただけですぐ再現できたんです。それで、オッケー!出店しよう!と決めました」
培ってきたたしかな技術と多店舗展開への経営戦略が揃ったとき、長年の悩みが晴れ道が拓けていくのを実感した。

「技術」「接客」「材料」「動員」の『4班制システム』が運営の基盤

比嘉代表が多店舗展開を実現するために自らが営業部長となり立ち上げたのは『4班制』というチームづくりのシステムだ。「技術」「接客」「材料」「動員」のそれぞれに4人の担当者を振り分け、その担当者の下にチームをつくり教育を行う。体系化することで業務がスムーズに引き継がれ、社長や幹部は経営に注力できる環境が整うという。
この『4班制』に取り組みはじめたことで、スタッフの働きやすさの改善とサロンのクオリティアップに成功。そして3店舗目となるヘアサロンを新たに出店し、会社は軌道に乗りはじめた。
「『4班制勉強会』を東京本部で実施し、その営業部長を自ら手を挙げ担当しました。その際にバックアップしてくれた先輩経営者には多大なお力添えをいただきました。この『4班制』でサロン運営の基盤ができたので、これが㈲Ruttsの原点だと思います」

また、経営者交流では“人に任せること”の要領やコツを伝授され業界の有力者たちからアドバイスを得るたび、まさに“目からウロコ”の連続だったという。
「1人分の視野では広い景色は見えません。人は年齢によってライフステージが変わっていきますが、自分に足りない視点を様々な立場から教えてくれるのが“経営者交流”です。自店のことだけでなく、業界全体の未来を考え後輩のために一肌脱いであげるという選択ができる経営者であれば理念を共有できると思います」
事業拡大など大きな展望を持ちスタッフとともに成長できるような上昇志向の経営者にこそ“経営者交流”は向いていると語った。

スタッフの『個性』を伸ばす教育方針へシフトしたことがターニングポイント

先輩経営者のサロンにはなぜスタッフが集まるのか。スタッフ確保に悩んでいた当時、サロン見学に伺い色々なスタッフの働き方を見ていてあることに気がついた。
「スタイリストにも個性があり得手不得手がありますが、苦手はスタッフ同士でフォローし合いながら、個人の長所を伸ばしているような教育方針が見えたんです。そのとき、自店のスタッフの長所は活かせているだろうかと自身を顧みました」
将来的に店舗が増え、スタッフを直接管理できる範囲に限界があることを考慮した場合、短所を指摘しひとつの模範に当てはめる教育よりも、長所を伸ばす方が理に適っているのではないかという考えに辿り着いた。
「真剣だからこそスタッフと意見のぶつかりが生じたりすることもありますが、きちんと対話し次の日には明るく声をかけます。“短所”は許して“長所”を伸ばす教育を心がけ、相手を受け入れながらスルーもできる“鈍感力”を大切にしています」
スタッフ個々人の短所を直すことに時間をかけるよりも、長所を何倍にも伸ばし、やりたいことがあれば自主性に任せるという教育方針に切り替えたことで定着率は安定。今ではスタッフ自ら撮影イベントを企画開催するなど働きやすいサロン環境を実現している。

約95%も失客を回避する『1対2』『1対3』の独自接客方法

㈲Ruttsでは、特にコミュニケーションに重点を置き独自の接客方法を取り入れている。
「“1対2”と“1対3”の接客方法という独自のメソッドがあります。たとえば、1対1のお客様と施術スタイリストの間にもう1人スタッフを混ぜて3人で会話をするんです。これが“1対2”の接客。みんな巻き込んで会話をするというのが昔からのスタイルなのですが、それを続けた結果、担当スタイリストが退職してもお客様の約95%はそのまま残ってくれるんです」
まるでサロン全体から接客をされているような安心感を与え、リラックスして心を預けてもらうことが失客を回避する秘訣というわけだ。“コミュニケーション”については新人の頃から技術力と同じくらいその重要性を指導し続けている。

また、会社の風土として特徴的なのは“スタッフの真面目さ”だという。『4班制』のコツコツと積み重ねる教育がしっかりとした基盤となって現在もサロンを支えている。
「東京のローカルな駅に店舗を構えているので、口コミは効果的な集客方法になります。そのため“この地域で口コミ1番か2番をとろう”と目標を掲げると、スタッフは地道にお客様にお声がけをしたり、実現するまで全員がコツコツと真面目に取り組みます。そんな場面を幾度となく見てきました」
仕事をするうえで、責任を持ってひたむきに取り組む姿勢に勝るものは他にない。スタッフの“誠実な人間性”を何よりも信頼していると語った。

現在運営しているサロン7店舗は、“美髪クリニック”や“ファミリーサロン”など、すべてのお店でコンセプトが異なる緻密なブランディングを図っており、全店にタカラベルモントの『YUME』シャンプー台を導入。“癒やし”や“リラクゼーション”メニューも好評を博している。
「同じようなサロンはつくらないようにしています。人事もそれぞれのサロンコンセプトに合ったスタッフを配置し、個性を活かせるような環境づくりに努めています」
口コミ、ブログ、LINEなど発信にも力を入れており、ホームページには自由闊達な社風が伝わるような工夫が施されている。

 

美容コンテストで優勝。次世代のクリエイティブを発信し続ける

ヘアコンテスト&ショーイベント『STYLING COLLECTION』にて、自身は準優勝を獲得、スタッフが個人部門で優勝を果たした経験があり、クリエイティブにも力を入れている。スタッフが自ら企画開催、またはSPCの大会を利用して『撮影会』『ヘアショー』『社内フォトコンテスト』など精力的に実施。創造性と組織力をつねに高め続けている。

28歳から組み立てる一人ひとりに合わせた『キャリアプラン』制度

自身が28歳で結婚したことを機に雇用を見直し、現在はライフステージの変化に合わせた“キャリアプラン”制度を設けている。
「28歳を分岐点としてそこからどのように働くかのキャリアプラン設計をしていきます。女性であれば出産後も同じ給与で復帰できる働き方を提案したり、男性であれば“のれん分け”や“業務委託”など、スタッフのやりたいことをできる限り叶えられるよう支援します。本人が将来に悩む前にあらかじめ進路を用意しておき、スタッフの希望に合わせたプランを組み立てていくという仕組みです」
サロン側から個人に合った進路を提案してあげることで、不安や迷いで離職するスタッフが激減。転職予定だったスタッフも28歳の面談で改めて希望のキャリアプランを立て直し現在も㈲Ruttsにて活躍中だという。
昨今の不安定な情勢において、自分の希望にピッタリ合った未来を会社とともに設計できるこの『キャリアプラン』制度は当サロンの将来性を無限に広げている。

INTERVIEW DATA

会社名
有限会社Ruttu
代表
比嘉 薫
創業
2004年9月22日
店舗数
7店舗
スタッフ数
52名
本社所在地
東京都練馬区田柄1-2-22
取材店舗名
Ruttu donna e uomo
店舗所在地
東京都板橋区成増2-11-8インフィニティ1F
URL
https://www.ruttu.com