株式会社アエラス 代表取締役

桂 辰麻Tatsuma Katsura

1970年10月8日、神奈川県生まれ。25歳で通信制の美容学校に通いながら美容師を目指す。2005年に独立開業し、現在2店舗を運営している。生涯顧客のための店販とお客様に合わせたカラーリングの提案でカラー比率70%を超える“大人女性のためのオーガニックサロン”を経営している。

『スタッフの将来』込みで描く10年後のビジョン。『店販』でギネス級売上を達成するサロンの秘訣に迫る。

開業翌日から大ピンチ!『スタッフが誰も来ない』1人のスタート

25歳で通信制の美容学校に通いながら美容師を志し、2005年にヘアサロン『Aeolus(アエラス)』を開業。
セット面は4台でシャンプー台は2台、10坪ほどの店構えから美容室経営へ乗り出したものの、業界に知り合いはおらず同業者との接点もないため、すべて我流でオープン。
すると、オープニングスタッフとして雇用した2名が次の日には店に来なくなった。オープン2日目にしてサロンは不測の事態に。
「スタイリストは自分だけ。1人で店を開けて回さなければならない状態で、悩んでも相談できる人はいませんでした。経営と運営の両方を1人でこなさなければならない現実に直面し、限界を感じました」

美容室経営の第1歩は“労務”を知ることから

開業早々、窮地に立たされたことから求人募集に取り組むも、新しいスタッフはなかなか定着しない。そのうえ頻繁に入れ替わることで売上にも影響がではじめていた。スタッフ確保の厳しさを痛感していた折りに、知り合いから他のサロン見学の誘いを受けたことがきっかけとなりSPC入会に至った。
「もともと未経験から美容業界に入ったため、有名な美容師や業界についてあまり詳しくなかったので、入会時に先入観はまったくありませんでした。それより、頻繁に相談にのっていただいたことが本当にありがたかったですね」
とりわけ、異質な美容業界において“労務”に関する知識がとても役立ったという。
「一般企業で“非常識”にあたることが、美容業界では“常識”になる場合もあります。まずは一般との違いを認識し、美容室としての労務管理体制をしっかり整えることが重要だと学びました」
スタイリストはヘアサロンにとって欠かせない存在だ。労働環境や雇用に関する制度をきちんと整備し、安定的にスタッフを確保していくことで、開業当初から比べ事業規模は約8〜9倍にも拡大。
今ではスタッフと共により大きな目標を描くことができるほど雇用状態は改善した。

経営にダメ出しの嵐。固定概念を捨て0からの立て直し

まずは、準会員として『メディアモーダー会議』に参加。経営についての学びを深めようと意気込んでいたが、出だしから鋭い指摘を浴びることとなった。
「我流でやってきたこれまでの経営方針を話すと、“自己満足になっていないか”との指南を受け初めて気が付きました。お客様のことを考えすぎるあまり、スタッフと向き合えていなかったのではと」
経営者として足りない視点への意見をもらううち、否定されたような気持ちになりながらも“店を維持するために経営者としてやるべきこと”を最優先に考え、会議のたびに自身の固定概念を一旦更地に戻してから、まったく新しく“経営戦略”を積み上げるように努めた。修正点が多いほど改善の余地も多いということだ。
「ほぼすべてのやり方を見直しました。素直にアドバイスを実践していくと、少しづつスタッフも定着しお客様も増えていくのを実感し、我流を捨て0から経営方針を立て直した効果が目に見えて現れ始めました」
それから店舗拡大の構想を実現するまでにさほど時間はかからなかった。
「ずっと路面店の物件を探していたので、不安もありましたが移転を決意しました。夢を語ると先輩経営者たちが背中を押してくれ、つねに経営者としての考え方を教えてくれたことが今の成功につながっていると実感します」
そして『Aeolus(アエラス)』は、目標にしていた路面店へ移転。その後も順調にスタッフが増えはじめ、事業拡大を図るまでに会社は急成長。現在は2号店となる『Lana(ラナ)』の2店舗を運営している。

『スタッフの将来』込みでサロンのビジョン。経営者交流で養った視点がターニングポイント

美容師を志すには一般的に遅いとされる25歳という年齢から業界に飛び込み、右も左もわからない状態で先輩経営者から学んだのは“スタッフの将来を一緒に考えてあげられる家族のような社風”だ。
これまでの孤独経営から、SPCに入会したことで“経営者”としての視野を広げ成長できたことがいちばんのターニングポイントだった。
「開業当初はサロンのビジョンを聞かれても答えることができなかったかもしれません。しかし今ではスタッフに多様な将来性を示すことができます。経営に挑戦したいなら暖簾分けを、技術を極めたいならそのために新たな道を作ることも可能です。スタッフの夢と挑戦を全力で支援します」
“スタッフの将来性”までを見込んだ当サロンの明確なビジョンはスタッフの数だけ幅広く広がっている。

昨年はギネス級店販売上を記録!『店販はお客様との信頼関係のバロメーター』

『Aeolus(アエラス)』では、特に店販に力を入れている。“店販はお客様との信頼関係のバロメーター”というモットーを掲げ、新人の頃から心がけるよう指導。会社の風土にもなっている。
「たとえば、美味い焼き鳥屋があれば人にオススメしますよね、商品も“良いものをオススメしよう”その感覚で良いと思うんです」
毎年12月の店販売上は技術売上に対して1:1にもなるが、2020年はコロナ禍による“巣ごもり需要”が増したことから店販は史上最高の売上を記録した。
「ただ“物を売る”のではなく、本当に良いものを紹介することを大切にしています。お客様の大半は髪のダメージを気にされているため、ホームケアの重要性を丁寧に説明しながらオススメするなど、一生担当させていただく心持ちでお客様と向き合うよう心がけています」
1人ひとりと時間をかけて信頼関係を築いていくことで“生涯顧客”を目指している。

 

カラー比率は70%。ニーズに合わせたニッチメニューで需要拡大を図る

『Aeolus(アエラス)』のコンセプトは『美と健康を大切にする大人女性のためのオーガニックサロン』。
1人ひとりの髪の健康やデザインなど要望に合ったカラーリングを導き出すことを得意としている。
「アレルギー対応のオーガニックカラーをはじめ、カラーメニューだけで10種類を取り揃えています。お客様の描く理想を丁寧にカウンセリングしピッタリ合うものをご提供できます」
客に合わせた細やかな提案やメニューの提供はニッチな市場をスピーディーに開拓できる当サロンならではの戦略だ。

スタッフが1人立ちするまで責任を持つ手厚いサポート体制

「スタッフは“ファミリー”だと思っています。誕生日や月1回の食事回を開催するなど、全員でコミュニケーションをとることを大事にしています」
将来を預かるスタッフを“子供”のように案じ、責任を持ってひとり立ちできるところまで送り出すことが今の夢だと語る。
「1から起業することの苦労は嫌というほどわかっているので、フランチャイズや新店舗を任せるなど、スタッフができるだけ安全に“やりたいこと”に挑戦できる環境を整えたいと考えています。ゆくゆくは現場を長く支えてくれるやる気のあるスタッフに渡していきたいですね」
1人からスタートした当サロンの未来を担うのは、今も増え続ける“ファミリー”の存在だろう。

INTERVIEW DATA

会社名
株式会アエラス
代表
桂 辰麻
創業
2005年8月27日
店舗数
2店舗
スタッフ数
15名
本社所在地
神奈川県相模原市南区相模大野3-16-7 MATビル 1階
取材店舗名
Hair Design Aeolus
店舗所在地
神奈川県相模原市南区相模大野3-16-7 MATビル 1階
URL
https://aeolusk.jp